届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
連れて行かれたのは、マンションから少し離れた大きな広場。
周りが小川と畑だったからか、夜の広場は静けさと暗闇だけ。
冬の寒さの中、白い息と一緒に白い煙が上がる。
冬の花火はまるで星空を散りばめたみたいに綺麗で、イルミネーションのように暖かく輝いていた。
「あんまりハシャグなよ。少し離れた所に住宅街あるからな。」
「うん。海翔も早くやりなよ。」
手招きするあたしの手には、3本の花火が光を放っている。
「こんなに楽しい花火は、やった事あったかな?」
「オレは初めてだな。」
「あたしも初めてだ。」
両手に花火を持って広場を駆け回ったり、花火の煙で絵を書いてみたり。
どれくらいの花火をしただろう。
残りは定番の線香花火だけ。
二人で寄り添い、しゃがみながら線香花火を見つめていた。
ふと見た海翔の顔。
線香花火の小さな光にうつされた顔は、元からカッコいいかもしれないけど。
優しくほほ笑んでいる顔がキレイに見えて。
思わず見とれてしまって。
「……好き。」
ふいにつぶやいてしまった。
「え!?」
不思議そうな顔で振り向いた顔に。
「霧生くん。」
自分が一番、驚いている。
思わず霧生くんの名前をつぶやいてしまったことに。
固まったまま動けない。
ドクン
ドクン
ドクン
痛いくらい、冷たい鼓動が大きく胸を打つ。
「綾瀬?」
「ごめん!!!!」
猛ダッシュでその場から逃げ出した。
どうしよう。
海翔と霧生くんを間違えちゃった!!
きっと、驚いているよね?
なんて言い訳していいかなんて分からない。
ただひたすら走って向かった先は、お姉さんの所だった。
今の尚吾には心配はかけられないから。
「真っ青な顔をしてどうしたの?」
そう言いながら玄関を開けた。