届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…
「重ねているじゃない。重ねるなって言う方が難しいけど…でも、海翔くんは霧生くんじゃないのよ?」
「分かっています。」
「分かってない。」
お姉さんの顔が真剣になっていく。
「どこが分かってないんですか?」
あたしも真剣に答える。
「海翔くんが好きなんじゃない。唯ちゃんはいまだに霧生くんが好きなの。」
「それは…」
「だって、そっくりじゃない?雰囲気が。自分では気づいていないつもりだろうけど、海翔くんに何かしてもらえば、霧生くんにやってもらったように見えて。似たようなことが起きたら、霧生くんと重ねて喜んで。どこかで霧生くんと同じことを要求している。」
「それは…でも、海翔が女の人と一緒にいたのを見た時、凄くイヤだった。他の女の人と一緒にいると思うと、嫉妬している自分がいる。」
「それは、唯ちゃんが海翔くんに霧生くんを重ねて見ていて、海翔くんじゃなくて、霧生くんが他の女の人といるように見えているだけ。」
「……。」
返す言葉がなかった。
ピッタリと当たりすぎていて
「例え今はごまかして付き合ったとしても、いつかは現実を見る時がくるの。現実っていう壁にぶつかったらどうするの?傷つくのは海翔くんよ?唯ちゃん、自分の心から逃げてばかりじゃ仕方ないのよ?」
「逃げているって…。」
「人ってね、楽な方にばかり行こうとするの。でもね、現実があるの。」
「そう。逃げるばかりじゃなくて、向き合うことも大切よ?」
今まで気づきもしなかった。
そう言われれば…
ずっとごまかしていたかも。
どこかで霧生くんじゃないって分かっているのに。
霧生くんと一緒にいる錯覚をしていた。
だから今日。
霧生くんの名前を思わず言ってしまった自分がいたんだ。
「まあ、パーッと飲みにでも行って来なさい。」
そう言いながら、笑顔であたしを送り出した。
未成年にパーッと飲みに行けって言う大人もどうかと思うけど。
それでもあたしの足は『G』に向かっていた。