新撰組のヒミツ 弐
生きていくと決めた以上、職が無ければ野垂れ死ぬのがおちである。光は男と偽り、ごろつき達がたむろする街外れの賭場で用心棒を務めた。
他のごろつき達と揉め事になり、乱闘騒ぎに駆り出される日もあったが、金入りは良くなく、日々の生活がやっとな状況だった。
仕事に関しては、師に武術を教わっていたため、単なるごろつきに怪我をさせられることはなく、余裕を持って用心棒をしていた。
賭場という場所は、ならず者が出入りするということもあり、裏の情報を安易に手に入れることができる。そうやって、光は師の仇の情報を探っていたのだ。
「おい、そこのお前」
ある日、光が賭場の外で壁に寄りかかり、道を歩く者たちを興味本位で観察していたとき、一人の笠を被った浪人風の男が彼女に話しかけてきた。
何気なくそちらに目をやれば、男は光に手招きをしている。興味をそそられた光は、男の近くまで寄ると、「何?」と訝しげに問うた。
「俺と組んで仕事をしないか。この数日、お前を見ていたが……いい仕事仲間になりそうだと思った。どうだ、今の仕事より遥かに金は弾むぞ」
ストーカーか、という言葉を堪え、光は男の目があるであろう笠の位置を見つめる。気のせいだろうか、男からは血ような生臭い臭いがした。
安寧で守られて幸せに生まれ育った光とは、住む世界が違うのだろう。
――師や、師を殺したあの男のように。
「ある男の情報が欲しい。それが手に入るなら、あんたの言う仕事でも何でもやる」
気付くと、声を殺し憎しみの籠もった声で言っていた。すると、笠の男は低く声を漏らし、その肩を小さく揺らす。
何が面白かったのかは知れないが、どうやら必死に笑いを堪えているようだ。光にとっては、あまり気持ちのいいものではない。
「……ねえ、何で笑ってるの?」
「いや……やはりお前は俺と似ている」