新撰組のヒミツ 弐
そう言われ、光は薄汚れた男の全身を観察するように見る。その後、自分を見下ろし、一体どこが似ているのだろうか……と、真剣に考え始めた。


すると、再び男は笑い声を漏らして「違う、内面的にだ。顔は似てないぞ」と光の間違いを指摘する。笑われた光は思わず顔を赤らめ、「うるさい」と呟いた。


男は名前を立花と名乗り、光は自分を下川と、お互いに苗字しか名乗らない。


光は立花をさり気なく見て、何か読み取れる情報が無いか、観察していた。


「その情報が欲しいのなら覚悟を決めろ。お前も気付いただろう。悪人相手とはいえ、人を殺める仕事だ。お前は殺したことがあるか?」


「……無い。だけど――出来る」


自分に言い聞かせるように呟く光に対し、「そうか」と立花は無感動に呟いた。


脳裏に過ぎるのは、不機嫌な表情をする先生の顔、そして優しい笑顔を浮かべる御太郎と共に、幸せに暮らす日常。


――いつか、あの日々を取り返したい。心の底にある純粋でささやかな願い。


もう二度と叶わない想いだとしても、光はそう願わずにはいられなかった。


「なら行くぞ。まずは主に会ってもらう」


「分かった」


これでよかったのか。返事をした瞬間、人道に反する葛藤と、様々な疑問が湧き上がってくるが、引き返せない道を選んだ事実には変わりない。


なにが何でも、矢武鹿助を殺した者を探し出すために。


悪行に身を落としている者に至っては、鹿助の形見と言うべき身につけた武術で、天誅を下してやるのもいい。


鹿助は死んだ。誇りを守って死んだのだ。


だが、この世から完全に消え去った訳ではない。光、御太郎、知り合いの人々――そして下手人の胸には、確かに彼がいる。


堪らないほど憎い下手人は、きっと〝ここ〟にいる。奴を探し出すために、文字通りこの身を担保に博打を打ったのだ。


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