新撰組のヒミツ 弐
確かに、此処でじっとしている方が賢明なのかもしれない。いずれは情報が手元に転がり込んでくる可能性もある。その場合は、この二年の努力が水の泡になってしまう。
辛苦を嘗めたこともあったが、未来に手に入るであろうたった一つの情報を求め、耐え抜いてきたのだ。
しかしながら、この二年もどかしさばかりが先行し、どうにかなってしまいそうだった。
雪はただ無言。口を閉ざすばかりだ。
いつもは従順な光が、かのごとく例を見ないように挑戦的で無礼な物腰をしているのは、いわば成功率の低い一つの賭だった。
これは真剣に言っていることなのだ。その気持ちが少しでも伝わればいい、と思ってのことである。
――うんともすんとも言わない、ひたすら無言を貫き通す雪に、光の思いは果たして伝わっているのだろうか。
「……それでは、御用も無いようでいらっしゃるので、これにて失礼致します」
そして、雪は最後まで黙っていた。その様子に対し、光は絶望感を抱く。
それは、雪に一縷の望みを抱いていたからかもしれない。強硬な態度に出れば、情報の一片でも漏らすのではないか、と。
「……お世話になりました」
光は扉が閉じてから小さく呟く。
確かに、余りあるほどの金は儲けさせてもらった。だが、大金を手にした対価は価値に見合わず、本当に欲している一つの情報を買うには至らない。
――ただ働きもいいところだ。
最早、ここに用など無い。
ここで築き上げた仲間――仲間と呼べるものであるかは分からないが――を残し、一言も告げることなく去るのは、些か後ろ髪の引かれるものである。
しかしながら、光の決意を揺るがすほどのものでもなかった。