新撰組のヒミツ 弐
雪たちには〝下川〟としか名乗っていなかったため、光が〝井岡〟と改名してからは、彼女を追跡することが難しくなった。
逃亡を続けながら不逞浪士を斬り捨てる、流浪の生活を送っていた井岡光。どんな輩であろうとも邪魔立ては許さなかった。
だが、僅かに残った良心ゆえか、女子供と年寄りには優しくした。彼らを守ろうとして不逞浪士を斬ったこともある。
不逞浪士と自分を比較し、自分は落ちぶれていないことを確認していたのか。何れにせよ、単なる自己満足に過ぎなかったのだろうが。
彼女が新撰組の前身――壬生浪士組に入隊することになったのは、それから数ヶ月のことである。