新撰組のヒミツ 弐
「ならば、お前の命は保障出来なくなる。お前は脱走した罪を償っていないからな」


意見は平行線を辿る。お互いの決して交わらない意見の隔たりが、光と立花の立場を表しているようだった。


(本当に、いつから私たちは......)


眉間に皺を寄せ、自分の甘さに歯噛みする。


虫の良い話なのだが、昔の関係に戻れるのではないか、と心の何処かで期待していたのかもしれない。


「立花。聞きたいことがある」


感傷に囚われていても、光の思考は曇らなかった。光から何かを感じたのか、立花が表情を硬くする。


「雪様は何者なんだ」

「......」

「私を生かすことには、情報が漏れる危険がある。なぜ、危険を犯してまで新撰組の情報を知りたがる?」


腑に落ちないのだ。彼女は、立花のように表立って幕府に楯突いている訳でもあるまいに。


確かに、彼女は裏稼業をしているが、新撰組と表立った対立関係にあるわけではないのだ。


つまり、関わりを持たなければ害はないというわけである。


しかし、彼女の部下である立花は、浪士の体をなして活動している。この活動が、彼女と無関係であると言えるだろうか......?


「俺から詮索するのは止めろ」


何か、重大な結論に至りそうになったところで、立花の冷たい声によって思考を中断させられる。


無言で睨み合うが、立花は表情を変えない。こうなると、立花は頑として意志を曲げないということを光は知っている。


......そのようなところが、光と似ていた。


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