新撰組のヒミツ 弐
奴は、何も言わなかった。
まさか、あの立花が、と歩きながら思う。
一つ、聞いてみたいとは思った。
奴はどのような心境で光の始末を提言したのだろうか。
立花は公私の感情を混同することなく、感情を制御している。脱走した光に足りなかったことは、恐らくそれである。
ただ、苦しんでいるのは自分だけではないのだろう。実際には、立花も奴なりに昔と今の関係の変化に苦しんでいるのではないか、と感じた。
光は自分の手を見下ろす。
身体は夜風で冷めていくのにも関わらず、手だけは僅かな温もりがあった。