新撰組のヒミツ 弐
厳寒の師走も先ほど終わりを迎え、新たな年がやってきた。
今晩は節度ある自由を過ごすことを許されている。蕎麦屋で除夜の鐘を聞きながら蕎麦をすすったあと、光たち山崎、原田、斎藤、安藤、同じ監察方の吉村貫一郎ほか新撰組の親しい隊士らは、神社に来ていた。
「すごい人出ですねー」
「ああ、おめでたい日だからな」
「ったく見渡す限り人、人、人だぜ……」
参拝の列は、皆神様にしつこくお願いしているのか先程から殆ど前に進まない。彼らは半ば諦めて呑気に会話している。その口調もどこか明るく楽しげだ。
ああ、そういえば、と光は、寒そうに背中を丸めて手に息を吹きかける安藤に微笑みかけた。
「安藤。お前は先日副長助勤になったそうだな。おめでとう」
「ありがとうございます。これも全て先生のご指導のお陰です……!」
寒さも忘れ、感激したように肩を震わせる安藤に光は苦笑する。
「いや、お前のたゆまぬ努力が実ったんだ」
「〜〜先生っ!」
安藤の恐ろしいのは、刀や弓の才能に驕ることなく努力を重ねに重ねるというところだ。光も学ぶことが多い。感心していると、ぼそりと後ろから暗い呟きが聞こえてきた。
「……私も撃剣師範になりましたよ」
「吉村、張り合うな」
山崎の呆れたような声で吉村は口を噤んだ。
幽霊を本気で怖がったり、部下に大人気なく張り合ったり……吉村は優秀で良い人だがどこかズレている。
「光、そんな薄着で寒くないか」
山崎が光を見て気遣わしげに声をかける。やはり作った口調は烝には似合わないな、と思いつつ、光は首を横に振った。
「いや、大丈夫。ありがとう」
今晩は節度ある自由を過ごすことを許されている。蕎麦屋で除夜の鐘を聞きながら蕎麦をすすったあと、光たち山崎、原田、斎藤、安藤、同じ監察方の吉村貫一郎ほか新撰組の親しい隊士らは、神社に来ていた。
「すごい人出ですねー」
「ああ、おめでたい日だからな」
「ったく見渡す限り人、人、人だぜ……」
参拝の列は、皆神様にしつこくお願いしているのか先程から殆ど前に進まない。彼らは半ば諦めて呑気に会話している。その口調もどこか明るく楽しげだ。
ああ、そういえば、と光は、寒そうに背中を丸めて手に息を吹きかける安藤に微笑みかけた。
「安藤。お前は先日副長助勤になったそうだな。おめでとう」
「ありがとうございます。これも全て先生のご指導のお陰です……!」
寒さも忘れ、感激したように肩を震わせる安藤に光は苦笑する。
「いや、お前のたゆまぬ努力が実ったんだ」
「〜〜先生っ!」
安藤の恐ろしいのは、刀や弓の才能に驕ることなく努力を重ねに重ねるというところだ。光も学ぶことが多い。感心していると、ぼそりと後ろから暗い呟きが聞こえてきた。
「……私も撃剣師範になりましたよ」
「吉村、張り合うな」
山崎の呆れたような声で吉村は口を噤んだ。
幽霊を本気で怖がったり、部下に大人気なく張り合ったり……吉村は優秀で良い人だがどこかズレている。
「光、そんな薄着で寒くないか」
山崎が光を見て気遣わしげに声をかける。やはり作った口調は烝には似合わないな、と思いつつ、光は首を横に振った。
「いや、大丈夫。ありがとう」