新撰組のヒミツ 弐
夜が明るみはじめた頃、光たちは屯所に戻ってきた。広間で局長や副長らから有難いお言葉を頂き、朝餉を取る。
皆が食べ終えた頃、土方が「分かっいると思うが、明日は大坂に向けて出発する。準備をしておけ」と正月気分の隊士に釘を刺す。
山南も「およそ半月は掛かります。今日は英気を養ってくださいね」と微笑んだ。
家茂公入洛の道中を護衛するため、新撰組は明日大坂に出立する。光は留守番組だが、大半の隊士が居なくなるので、静かな屯所になりそうだ。
──そして、自室も。
光が留守番なら山崎は出る。戦力的に山崎と光が一緒の任務に就くことはない。これは、力のある二人が任務に失敗し、共に落命する危険を避けるためでもある。
部屋に戻ると、下坂する山崎は既に明日の準備をしていた。彼は光に気付くと、いつもと何も変わらない表情で微笑んだ。
「俺のおらん間、監察のこと頼む」
「……うん」
そのつもりだという思いでこくりと頷くと、山崎は安心したように荷造りを再開した。
入り口に佇む光は、明日にはいない彼から目が離せなかった。