新撰組のヒミツ 弐
(穏健派と過激派の対立という訳か。過激派の計画とやらに穏健派は尻込みしている。……それにしても、この声……どこかで)
記憶に引っかかる声だ、と光は眉を顰める。低く、落ち着いた声音。
さて、どこで聞いたものであったか。
「まあまあ……お互い、目指すところは同じです。折角の酒の席ですから……」
誰かの仲裁によって、言い合いは無くなった。そして、再び小声で、何かを話し始めた。
ここからでは途切れ途切れにしか会話が聞こえない。重要な会話は隠語なのか、殆ど意味が分からない。
ただ、過激派と穏健派が”計画”について意見交換をしているらしい。
計画──最近よく耳にする言葉である。
無精髭を生やした男の顔が脳裏に過ぎった。
これ以上重要な会話を大声で話す者はいないだろう。部屋の前にいる山崎ならば聞こえているだろう。光は気付かれる前にその場を離れた。
光と山崎は屯所に戻ると、土方に事の次第を全て報告した。
山崎は浪士たちの活動拠点を幾つか聞き取っていたらしく、それも土方の耳に入れる。着々と情報は集まっていた。