新撰組のヒミツ 弐
「さて、僕たちも行きましょう」
沖田は顎に滴る汗を無造作に拭った後、皆を促して先を行った近藤の背中を追う。そして、我らが局長は、戸口の前で一呼吸置き一気に戸を開けた。
「主人はおるか、御用改めである」
近藤は強い語気で告げ、店の中をぐるりと見渡した。そこにいた池田屋の主人・惣兵衛は、近藤の浅葱色の羽織を見るなり目を剥いて、二階の階段を駆け上がっていく。
「し、新撰組や……! お客さん、新撰組が……!」
──やはり池田屋が当たりであった。
入り口にいた伝令役が直ぐさま四国屋に走っていく。大声で叫ばれては堪らない、と近藤も階段を駆け上がり、主人の頭を思いっきり殴って気絶させた。
「行くぞ!」
近藤の声と同時に、沖田を先頭に光と永倉、藤堂が店に突入した。予定通り、永倉と藤堂は一階で待機、二階からの脱走者との応戦を任せる。
沖田と光、近藤は二階に上った。階段を上った所にある部屋の戸を開ける。
「新撰組だ! 御用改めである! 大人しくお縄につけ! さもなくば、容赦はせぬぞ!」
そこで卓を囲んでいた大勢の浪士たちが一斉に此方を向いた。
そして、固まる。
凍り付いた空気を打ち破ったのは、叫び声を上げて斬りかかってきた一人の浪士だった。反応は速いが、それだけだ。それを、沖田が迷いない一刀で斬り捨てた。
「貴様らァ!」
──止まっていた時間は激流と化した。
怒りを露わにした他の浪士たちは一斉に抜刀、突進するが、やすやすとやられる光達ではない。怒りと混乱で短調になった攻撃を繰り出す浪士を即座に倒した。
次々と斬られる仲間を見た浪士たちは、切っ先を鈍らせた。そして、誰か一人が震える声で「こいつら、局長の近藤とあの沖田だ……!」と言うと、一気に彼らは及び腰になった。
流石、有名人の名が持つ力は違うな、と光は片頬で笑う。
その時、刀を戻した数名が窓から飛び降りて脱走を試みる素振りを見せた。そうはさせるか、と光は部屋に踏み込み、その背中を貫いた。
「……一度相対した敵に背を向けるとは」
新撰組では切腹ものだ。そう告げると、この部屋の中は半狂乱になった。立ち向かう者、悲鳴を上げて逃げる者、状況を見ている者──。
──敵味方、入り乱れての戦闘が始まった。
沖田は顎に滴る汗を無造作に拭った後、皆を促して先を行った近藤の背中を追う。そして、我らが局長は、戸口の前で一呼吸置き一気に戸を開けた。
「主人はおるか、御用改めである」
近藤は強い語気で告げ、店の中をぐるりと見渡した。そこにいた池田屋の主人・惣兵衛は、近藤の浅葱色の羽織を見るなり目を剥いて、二階の階段を駆け上がっていく。
「し、新撰組や……! お客さん、新撰組が……!」
──やはり池田屋が当たりであった。
入り口にいた伝令役が直ぐさま四国屋に走っていく。大声で叫ばれては堪らない、と近藤も階段を駆け上がり、主人の頭を思いっきり殴って気絶させた。
「行くぞ!」
近藤の声と同時に、沖田を先頭に光と永倉、藤堂が店に突入した。予定通り、永倉と藤堂は一階で待機、二階からの脱走者との応戦を任せる。
沖田と光、近藤は二階に上った。階段を上った所にある部屋の戸を開ける。
「新撰組だ! 御用改めである! 大人しくお縄につけ! さもなくば、容赦はせぬぞ!」
そこで卓を囲んでいた大勢の浪士たちが一斉に此方を向いた。
そして、固まる。
凍り付いた空気を打ち破ったのは、叫び声を上げて斬りかかってきた一人の浪士だった。反応は速いが、それだけだ。それを、沖田が迷いない一刀で斬り捨てた。
「貴様らァ!」
──止まっていた時間は激流と化した。
怒りを露わにした他の浪士たちは一斉に抜刀、突進するが、やすやすとやられる光達ではない。怒りと混乱で短調になった攻撃を繰り出す浪士を即座に倒した。
次々と斬られる仲間を見た浪士たちは、切っ先を鈍らせた。そして、誰か一人が震える声で「こいつら、局長の近藤とあの沖田だ……!」と言うと、一気に彼らは及び腰になった。
流石、有名人の名が持つ力は違うな、と光は片頬で笑う。
その時、刀を戻した数名が窓から飛び降りて脱走を試みる素振りを見せた。そうはさせるか、と光は部屋に踏み込み、その背中を貫いた。
「……一度相対した敵に背を向けるとは」
新撰組では切腹ものだ。そう告げると、この部屋の中は半狂乱になった。立ち向かう者、悲鳴を上げて逃げる者、状況を見ている者──。
──敵味方、入り乱れての戦闘が始まった。