ティアラ3 (見直し中)
第1章
変わったもの、変わらないもの
幼稚園に通っていた頃は、本気でお姫様になれると思っていた。オトナになって、王子様と出会い、結婚相手に選ばれさえすればなれるものだと信じていた。
裾がふんわりと広がったドレスや、宝石を散りばめたカラフルなティアラにも憧れて、七五三で着させてもらった膝丈のドレスじゃ満足もできず、お菓子のオマケだったアクセサリーを大事にしてる女の子だった。
当時のスケッチブックには、三角屋根がたくさんあるお城やウインクをするドレス姿の自分をよく描いていたと思う。
小学生になってからもその夢は持ち続けていたのだけれど、3年生の時だったかな……作文の書き方を学ぶ授業があって。そこで「なりたい職業」について書く宿題を出された。
私は悩むことも無く、お姫様になったときの自分を思い浮かべ、お城での優雅な生活を想像して書いたのだけれど、その作文を盗み見したクラスメイトの男子からはひどく笑われてしまった。
「百瀬がお姫様って書いてるー!」
「ばっかじゃねーの? そもそもお姫様って職業は存在しませ〜ん」
「美和ちゃん、まさか本気で書いてた?」
女の子たちにまでクスクスと笑われて、恥ずかしくてうつむくだけだった私は、その日から将来のことを考えなくなった。想像ができなかった、お姫様以外の平凡な自分は。
将来に夢を抱かなくなったけれど、その分、私は常々小さな目標を立ててきた。
小学生時代は成績。もう二度と他人からバカにされないよう、全教科満点を目指して予習と復習は欠かさなかった。
中学生になってからは貯金。兄と妹がお年玉で好きなものを買っているときも、決めた額になるまではと我慢する日々で。
高校ではミスコンで優勝するために外見に力を注いでいたと思う。貯めていたお金で美容グッズや運動器具を買って毎日努力していた。
お姫様という職業が存在しなくても、他人からも憧れられるようなポジションに立っていたかった。
努力すれば、目標を達成した瞬間は最高に幸せで。またその気持ちを味わうため、すぐに次の目標を考える。
達成できそうにないものには最初から手を出さない。時間の無駄だから。そんなことをする暇があるのなら、できそうなものから取り組むほうが絶対にいい。
これまでの私はずっとそうだった。そうしてきたから、欲しいものは大抵手に入れられた。それで十分に満足できていた。
なのに、どうしてだろう。
最近の私は、手の届かない場所にあるものを見つめてしまう。欲しいと思い始めている。笑われたくないから人前で話したことはないけれど。
裾がふんわりと広がったドレスや、宝石を散りばめたカラフルなティアラにも憧れて、七五三で着させてもらった膝丈のドレスじゃ満足もできず、お菓子のオマケだったアクセサリーを大事にしてる女の子だった。
当時のスケッチブックには、三角屋根がたくさんあるお城やウインクをするドレス姿の自分をよく描いていたと思う。
小学生になってからもその夢は持ち続けていたのだけれど、3年生の時だったかな……作文の書き方を学ぶ授業があって。そこで「なりたい職業」について書く宿題を出された。
私は悩むことも無く、お姫様になったときの自分を思い浮かべ、お城での優雅な生活を想像して書いたのだけれど、その作文を盗み見したクラスメイトの男子からはひどく笑われてしまった。
「百瀬がお姫様って書いてるー!」
「ばっかじゃねーの? そもそもお姫様って職業は存在しませ〜ん」
「美和ちゃん、まさか本気で書いてた?」
女の子たちにまでクスクスと笑われて、恥ずかしくてうつむくだけだった私は、その日から将来のことを考えなくなった。想像ができなかった、お姫様以外の平凡な自分は。
将来に夢を抱かなくなったけれど、その分、私は常々小さな目標を立ててきた。
小学生時代は成績。もう二度と他人からバカにされないよう、全教科満点を目指して予習と復習は欠かさなかった。
中学生になってからは貯金。兄と妹がお年玉で好きなものを買っているときも、決めた額になるまではと我慢する日々で。
高校ではミスコンで優勝するために外見に力を注いでいたと思う。貯めていたお金で美容グッズや運動器具を買って毎日努力していた。
お姫様という職業が存在しなくても、他人からも憧れられるようなポジションに立っていたかった。
努力すれば、目標を達成した瞬間は最高に幸せで。またその気持ちを味わうため、すぐに次の目標を考える。
達成できそうにないものには最初から手を出さない。時間の無駄だから。そんなことをする暇があるのなら、できそうなものから取り組むほうが絶対にいい。
これまでの私はずっとそうだった。そうしてきたから、欲しいものは大抵手に入れられた。それで十分に満足できていた。
なのに、どうしてだろう。
最近の私は、手の届かない場所にあるものを見つめてしまう。欲しいと思い始めている。笑われたくないから人前で話したことはないけれど。
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