縛られたい
縛られたい
赤くて細い細いリボンは、彼から貰ったネックレスを可愛らしく包んでいた一部だった。

1センチにも満たない細さが繊細で「このリボンも素敵。」って、浮かれて口走ったひと言が、



全ての引き金と、なってしまった。



スルスルスルスル


この、布が擦れる音を聞くだけで、ダメになる。

覆い被さっていた彼の、ウエーブがかった肩より少し長めの髪が私の頬を通過すれば、視界には意地悪そうに笑うその表情。

「まだ、何もしてないのに。」

そう言って、困った顔を作る。

「よっぽどコレが気に入った?」

無言で彼を見上げれば、視線が解けなくなる程、絡んで交わる。
スイッチが入ると、クチが利けなくなるから、目で語ろうと試みる。

「ホント、よく似合うな。ネックレスよりも気に入ったんじゃない?」

肩を揺らして遠慮がちに笑う声。
聞いてるだけで、溜息にも似た息が漏れる。
視線が私から一向に外れないから、眩暈がする。

「コラ、足。動いてる。」

馬乗りになっている彼が察知すれば、呆れたように私を咎めた。




彼によってキレイに結ばれたあの細い細いリボンは、
私の頭上で、私の両手首を彩っていた。

それはその夜だけの彼の悪戯だったハズなのに、
うっかりハマってしまったのは、誰でもない、私。

チカラを込めれば簡単に解けてしまうリボンもそのままに、
いつもの3倍、乱れた。
いつもの5倍、エロかった。(彼曰く)


「いいよ、何も言わなくて。その顔見てれば全部解る。」

彼の手が、意味を持って太股を往復する。
ぶるり、と震える身体は、確かに感覚がいつもより、過敏。

この手を縛って、私に跨れば、彼はいつもより饒舌になる。

「こうやって眺めてるとさ。」

彼の手のひらは腰を包み、何度も揉み込む。
食い込む指のせいで漏れそうになる艶声をどうにか噛み殺した。

「何でだろうな、お前の望む事をしてやろうと思う反面、」

彼の声を聞きながら、手首にそっとチカラを込めた。
外したいワケじゃなく[彼の拘束]を感じたかったから。
軽い紐の摩擦に、身体の中が潤む。

同時に彼が手のひらを胸の谷間に這わせれば、

無意識。
誘う様に、唇の隙間を作ってしまう。

「俺まで、おかしくなりそうになる。」

痛くも無いのに歪めた顔。
ぎゅっと握られた胸のふくらみ。

彼のスイッチを、押し込んだのは私。

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