夏恋迷路◆だから僕らは夢を見た【短編集】
「僕には相変わらず何も夢を見なかったし、夢を持っていないけれど」
これだけは言える。間違いなく言える。
今年の夏は......
「今までの中で一番よかった」
僕は微笑んだ。
僕の目の前にいる、名前も知らない少女に。
「うん。私も今年の夏は良かった、って言えるよ。
ねぇ......来年の夏は私たちも夢を見れるといいね」
そう言った少女の顔は、夢を見ていたものたちのように眩しかった。
「そうだね」
【完】