夏恋迷路◆だから僕らは夢を見た【短編集】
「ねぇ、お母さん。あたしは今何年生?」
「あなたは今小学6年生よ」
小学6年生!?一体いつまであたしは眠っていたのよ。
あたしが自分自身に呆れていると、お母さんは少し笑いながら話した。
「奈津ったら一体どんな夢を見ていたの?まるでお姫様のように微笑みながら寝ていたのよ」
「......覚えてない」
覚えていないけど、“お姫様”という単語には聞き覚えがあった。
「あら、そうなの?もう!目が覚めたら聞こうと思ってたのに」
お母さんは残念そうに言った。
どんな夢を見ていたかは覚えていないけれど、とても素敵な夢を見ていたのは覚えている。
いつか、どんな夢を見ていたのか思い出せるといいなぁ。
*お姫様に憧れた少女の話*