夏恋迷路◆だから僕らは夢を見た【短編集】
「できてるよ」
嘘。本当はできてない。
きっとこんな嘘、陽子にはすぐにバレてしまう。
「分かった。じゃあ、最後のデート楽しんで!」
嘘だって分かってるくせに何も言わないのは陽子の優しさ。
それなのに更に優しい言葉をかけてくれるの。
「...泣きたくなったら言ってね」
泣きたいよ。本当は今も泣きたくてしょうがない。
でも、今泣くのは違う気がするから。
「振られたら、すぐに電話するからね!」
少しでも元気なフリをしよう。
泣くのは、花火大会が終わってから。
それまでは精一杯笑っていよう。