しろくろ

†氷の幻影

ミ――ン ミ――ン

「アッチぃぃいい!!!」


「もぉ!叫ばないでよぉ
よけいに暑くなるじゃん」

「うっせ!
だいたい遠すぎんだよその村!!
まだかかんのかよ」

「すみません…
もう少しで着くと思うんですけど」


あれから三日間歩き続けて
煉耶のイライラはピークに達しかけている

しかしまだ村は見える気配もなく
森と道ばかり続いている


「だいたいなんで北に行くほど暑くなんだよ!!
意味わかんね――よ!!」

「昔はセミなんて夏でも見ることはなかったのに…
こんな風になったのも全部あの男が来てからだ…!」


ルクスの口調が強くなる

握った拳は小刻みに震えている
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