しろくろ
暗い森の中から見慣れたシルエットが浮かんでくる。そこに在るのは何時もの笑顔のあいつ。
だが何故か、何時もと違う感じがした。
「煉チャンっ!!」
嬉しそうに近づいてくる楓に、煉耶はゆっくりと息をはいた。
「楓、お前さっきの悲鳴は何だったんだ。」
表情を変えない煉耶に、楓は申し訳なさそうに身を縮める。
これは楓の癖だ。
それも、本人も無意識の。
「…ごめんなさい。
川で水を汲んでたら、滑って落ちちゃって……。
タオルで拭こうと思って戻ってる途中でルクスくんに会って、連チャンが走って行ったって聞いたから。」
やはり、何時もの楓だ。
さっき感じた違和感もきっと川に落ちて濡れてるからだ。
気配を感じられなかったのは、俺が焦っていたからだ。
そう考えると、煉耶はニッと笑った。
「わかったよ。たく、気を付けろよ。
只でさえ、ドンクサイのに。」
楓がえへへ、と笑うと三人はテントへと戻って行った。
ポチャン
魚の跳ねる音がもう一度響いた。