しろくろ
そして日はさらに沈もうとするなか



「誰かぁ
誰か助けてぇ…」


楓は凍った川の中にいた

川に入った途端、音を上げて水が凍った時走って水から上がろうとしたが
脚がもつれて転び反対を向き直した
ちょうど体操座りの体制で凍り
動けなくなってしまっていた



そして先ほど身動きが出来なくなった楓の目の前で

パキパキ バキッ ガッバキッ

と音をたてて自分と同じ姿の氷の彫刻ができた


「な、なに?
これ…」


上ずった声で楓が呟くと


「な、なに?
これ…」

まったく同じ言葉を氷の彫刻が呟く

わけの分からない楓に氷の彫刻は近づき
額をあてる


氷の中にある手足と同じ感覚が額に触れる

すると

「ワ…私 は 湖南楓
ょ よろしくね…」


と氷の彫刻が喋りだした


そして凍った川からあがり自分とまったく同じ服を着て
肌も氷から楓と同じ色白の皮膚へと変わり
湖南 楓が出来上がっ


「じゃあね!
湖南楓さん…」


と残し消えて行った


「ま まって!
助けて!!ここから出して!!行かないでぇえ!!!」


楓の悲痛な叫びだけがこだました
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