しろくろ
そのころ
凍った川に取り残された楓の体力は限界に近づいていた


「さ 寒ぃょ…
誰かぁぁ 」


夜になり周りの気温も下がってきたうえに
凍った川に入ったままの手足が体温を容赦なく奪う


散々助けを呼んだが人の気配はまったくなく
誰かに助けてもらえる可能性も少ない

おまけに声を出しすぎたせいで喉がつぶれてしまい
今は大声を出すこともできない


心はここから抜けださなきゃ
と焦るのだが冷えきった躰が凍ってしまったように
まったく反応してくれないのだ


「煉チャン…
れ んちゃ ン……」


それでも楓は煉耶の名前を呼び続けた



もはや頭は働いていない


それでも名前を呼び続けるのは体に彼の名前が刻み込まれているからだろう




「れ れン… チャン…
煉 ちゃ…… 」



それから少しして
楓はついに意識をてばなした



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