しろくろ
「れ 煉耶さん!!!
こっちに楓さんが!!!」

ルクスが鬼気迫るような顔で息を切らせて走ってきた

「どうした!!」

「楓さんが大変なんです!!
とにかく来てください!!!」


煉耶はルクスに引っ張られるように走った
森をぬけ凍った川が見えてくる

そこには意識を失い項垂れるような楓がいた

「楓!!!」

煉耶は駆け寄って楓を川から引き上げようとするが
氷にしっかりと体が挟まれているため川からあがらない

「ぼくがここに逃げてきたら楓さんが倒れてて
でも、ぼくじゃ何もできなくて…」


煉耶は
フ―ッ
と息を吐き出した

「退いてろ…」

と呟きルクスが川から離れたのを見計らって
ブォオオオ

と炎を吐き出した


その炎は楓にはまったく触れずに川の氷を溶かしてゆく


「す、すごい…」


ルクスは無意識に感嘆の声をあげた

そして氷を溶かし終わった煉耶は楓を川からひきあげた


「楓!楓!!
しっかりしろ!!」

パシ パシッ
と何度か顔を叩いてみるが反応はない


「体が冷えきっています!
なにか暖をとらないと!!」

ルクスが言うと
煉耶は楓を川から離れたところに寝かせ隣に木を集め焚き火をたいた

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