しろくろ
刹那、部屋には先ほどのファリスの風とは比べ物にならないほどの突風が吹き荒れる。
しかし、それは煉邪の体は避けて吹いており煉邪への被害はない。

そしてその風の中心には楓が、頼りなく立っている。

「な、なんだこれは!
私はこんなもの知らん!!知らんぞ!!!」

その風を肌で感じたファリスは半狂乱になって叫ぶ。

「アナタガ、レンチャンヲ…」

「っ!!! ぁ、あぁ あ」

楓と目が会った瞬間にファリスの体は凍りついた。ただ立ち尽くし冷や汗だけが、身体中から溢れる。

まだ、楓に攻撃された訳ではない。楓はフラフラと立ちファリスをじっと見ているだけだ。しかし、今の楓はそれだけでファリスを凍りつかせる程の【なにか】で溢れている。

そして楓は腰にある鞘から短剣を抜き、動き出した。
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