しろくろ
しかし、楓の動きはとてもゆっくりで此ではいくら動きが殆んど止まっているファリスでも捕まえることが出来ない。

楓がフラフラと近づくと、ファリスはジリジリと後退する。
その繰り返しで二人の距離は一向に縮まらない。

しかも、楓の瞳は虚ろで生気が殆んどみられず、焦点が定まっていないようだ。

そうしている間に、楓は煉邪の隣にいた。

「レンチャン……」

楓は煉邪を見つめながら呟く。

そして、楓の虚ろな瞳が煉邪を映した時、ゆっくりと短剣を振り上げた。
窓ガラスから月明かりが漏れ、短剣と煉邪と楓が照らされる。

そして短剣が煉邪目掛けて降り下ろされた。
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