しろくろ
グサッッ

煉邪の心臓の真ん中を寸分の狂いもなく短剣が突き刺さる。

「…っな」

隣でその様子を凝視していたファリスさえも思わず声をあげた。

それも当たり前だ。
先ほど自分を庇い倒れた煉邪を殺すなどとても考えられない。
しかし今、現実に其が起こっている。

「…フ ハハハハッ!!!
見事だよ、湖南楓。
まさか君が氷雨煉邪に止めをさすなんて、流石の私でもまったく想像出来なかった。

しかし、私は確信した!
神の子孫の君達でさえこんなにも醜く騙しあう。人間なんて更に信頼の出来ない生き物だ。
だから私は、この世を変える!!この醜く腐りきった世界を、神の力で変えなければならないのだ!!!」

楓の瞳はまた光を失った様に暗く閉ざされる。ファリスの演説など耳に入っていない。ただ、焦点の会っていない瞳で、じっと煉邪をみつめていた。
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