しろくろ
楓の方を見ると目は虚ろで襲いくるファリスに剣を構えている。


あれはヤバい。

すぐに止めねーと


だがやはり体は動かない。血は少し固まって独特の異臭が鼻をつく。

目がかすれ視界は更にボヤける。




『煉チャン!』


声が聞こえる。

幼い時の楓の声。これは走馬灯という奴だろう。いよいよ死期が近いらしい。


『大丈夫っ!
私が煉チャンを守るから』


あぁ、そうだった。

あの日。

すべてが変わった日。

初めて人を殺した日。








オレがアイツを一生守ると誓った日──

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