Once again…
「…じゃあ、私のせいだっていうの?」
「そんなことは言わない。俺がもっと連絡してやれていたら、それだけで違ったのかもしれない。でもそれが出来なかった…でもきっと大丈夫だって、思い込もうとしてたよ」
「…それこそ今更よ…」
「離れ離れになって10年か…。でも俺は、忘れた事はなかったよ。今までも付き合ってた女はいるけど、それでも忘れた事はなかった。お前以上に、好きだった女はいない…」
「…残念だけれど、私は結婚しているのよ」
「離婚調停中だろ?」
「だとしてもよ。私は夫と同じ事はしたくないの。絶対にしたくない…」
「だったら俺は、調停が終わるのを待つよ」
「やめてよ、そんなこと聞きたくない…」
「待つよ…今度こそ…」
「聞きたくない!」
「綾子!」
必死に耳を塞ぎ、彼から目を背けた。
その私の手を掴むと、耳から引き離す。
そして今、彼の口からは聞きたくなかった言葉を、彼は口にした…。
「今でも愛してる…綾子…」
今日は直帰の許可を得ていたから、私は最寄の駅で社用車を降りた。
そしてそこから、一番早いルートを使って帰宅する。
駅に着いた時点で、いつもよりも少し遅くなっていた。
電車に乗る前に、翔太に連絡を入れる。
「もしもし、翔太? ごめんね、ちょっと遅くなっちゃったの。急いで帰るから待っていてくれる?」
「うん、僕なら平気だよ。気をつけてね、おかさん」
「うん、ありがとう。じゃあ、急いで帰るからね」
「分かった。じゃあね」
翔太との電話を早々に切ると、ホームに停車中の電車に急いで乗り込む。
いつもの電車ではないけれど、今からならいつもより30分程度遅くなるだけで済むだろう。
誰に似たのか、素直に育ってくれているのだけが救いだった。
夫は当時の上司に薦められた見合いで知り合い、結婚した。
初めのころはまだ良かった。
翔太を妊娠した時は、ものすごく喜んでくれていたのだから。
変わったのは、彼が今の部署に移って半年ほど経ってから。
今から3年くらい前だったと思う。
もう既に気持ちは離れてしまっているけれど、今の人と一緒になったとして…また同じことをしないといいけれどって思う。
そして、あたしが生きてきたこの10年と同じ期間を、彼はどんな風に生きてきたんだろう。
どんな人と付き合って、どんな風に感じてきたんだろう。
「そんなことは言わない。俺がもっと連絡してやれていたら、それだけで違ったのかもしれない。でもそれが出来なかった…でもきっと大丈夫だって、思い込もうとしてたよ」
「…それこそ今更よ…」
「離れ離れになって10年か…。でも俺は、忘れた事はなかったよ。今までも付き合ってた女はいるけど、それでも忘れた事はなかった。お前以上に、好きだった女はいない…」
「…残念だけれど、私は結婚しているのよ」
「離婚調停中だろ?」
「だとしてもよ。私は夫と同じ事はしたくないの。絶対にしたくない…」
「だったら俺は、調停が終わるのを待つよ」
「やめてよ、そんなこと聞きたくない…」
「待つよ…今度こそ…」
「聞きたくない!」
「綾子!」
必死に耳を塞ぎ、彼から目を背けた。
その私の手を掴むと、耳から引き離す。
そして今、彼の口からは聞きたくなかった言葉を、彼は口にした…。
「今でも愛してる…綾子…」
今日は直帰の許可を得ていたから、私は最寄の駅で社用車を降りた。
そしてそこから、一番早いルートを使って帰宅する。
駅に着いた時点で、いつもよりも少し遅くなっていた。
電車に乗る前に、翔太に連絡を入れる。
「もしもし、翔太? ごめんね、ちょっと遅くなっちゃったの。急いで帰るから待っていてくれる?」
「うん、僕なら平気だよ。気をつけてね、おかさん」
「うん、ありがとう。じゃあ、急いで帰るからね」
「分かった。じゃあね」
翔太との電話を早々に切ると、ホームに停車中の電車に急いで乗り込む。
いつもの電車ではないけれど、今からならいつもより30分程度遅くなるだけで済むだろう。
誰に似たのか、素直に育ってくれているのだけが救いだった。
夫は当時の上司に薦められた見合いで知り合い、結婚した。
初めのころはまだ良かった。
翔太を妊娠した時は、ものすごく喜んでくれていたのだから。
変わったのは、彼が今の部署に移って半年ほど経ってから。
今から3年くらい前だったと思う。
もう既に気持ちは離れてしまっているけれど、今の人と一緒になったとして…また同じことをしないといいけれどって思う。
そして、あたしが生きてきたこの10年と同じ期間を、彼はどんな風に生きてきたんだろう。
どんな人と付き合って、どんな風に感じてきたんだろう。