Once again…
「マキさん!大変です!」
息を切らせて倉庫へ駆け込んできた私を見て、マキさんがぎょっとする。
「な、なんだ? なんだぁ?」
「一昨昨日と、一昨日出荷した伝票、見せてください!」
「ああ? 納品ミスかぁ?」
「受注を受けて入力したまでは、受注通りなんです! なのにお届けしたものがまったく違って…」
「なんだ? 伝票でもすり替わったとか言うのか?」
「そうは言いません。でも原因解明しないと…」
「ま、そりゃ当たり前だ。伝票は送り状と一緒に、そこのファイルだ」
そう言うと、倉庫の片隅にあるスチールラックを指差した。
「ちょっと探してみます。場所、お借りします」
そう言うと、片隅のデスクで伝票をめくりだす。
「あった…」
「あん? どれだ?」
「これです…」
「何かおかしいところは?」
隅々見てみると、打ち込みをした時間が、私の持っている伝票と違う。
「入力時の時間が違います…。あと、伝票番号も」
「そりゃ…お前…。誰かが関わってるってことか?」
「…分かりません。でもすぐに戻って、部長と小栗さんと話してみます」
「おう。正規の物のほうはここにあるからな。すぐに対応してやる」
「ありがとうございます。この伝票だけお借りします」
急いで資材部に戻ると、部長に報告し、小栗さんに連絡をつける。
「おう、どうだった?」
「はい、受注時のノートも入力伝票も、間違いなく正規の商品で間違いはありませんでした。ただ…」
「ただ?」
「…倉庫のほうに回った伝票が、最初の伝票と時間も伝票番号も違ってまして…。今、部長とも話していたんですけど、改竄された可能性も捨てきれないと…」
「改竄?」
「ええ…その通りです。ただ、商品のほうは、マキさんが確保してくださってますので、すぐに配送可能です」
「そう、分かった。とりあえず、こっちの責任者に事情を話して、すぐにそっちに戻るから」
「かしこまりました。こちらももう少し調べてみます」
「ああ、そうしてもらえるか? じゃ、また後で」
すぐに部長と打ち合わせをし、合間合間で受注を受ける。
そんな中で、どうしてこんな事が起こったのかを考える。
もしこれが、誰かの心無い仕打ちなのだとしたら…。
いったい誰が、なんのために?
必死で考えてみるけれど、一向に思い浮かばなかった…。
小栗さんが帰社してきたのは、16時を少し回った頃の事だった。