Once again…
購入したのは7年前。
私が23の時だ。
だからローンもまだ残っている…当たり前だけど。
このマンションを貰う=ローンも貰うって事になってしまう。
冗談じゃない…私は翔太を守っていかなきゃならないんだから!!
すぐに私は仕事を探し始め、知人の紹 でなんとか今の勤務先を見つけた。
社宅は独身者向けの寮だけで、家族向けはない。
けれど家賃補助をしてもらえる事になり、すぐに部屋を探した。
かわいそうだけど、幼稚園のお友達と同じ学校には入れて上げられない。
生活能力に見合った場所に引っ越さなくちゃいけなかったから。
そして同時に、離婚調停を始めた。
慰謝料や、特に養育費なんて当てにはならないけど、マンションの頭金分くらいは取り返したかったから。
「TAJIMA 資材部藤森です。安井様、いつもお世話になっております。どうなさいました?」
その日の朝、一番で受けた電話は、大手の建築会社から。
安井さんという営業さんは、かなりのイケメンでわが社でも人気のある方だ。
身長はものすごく高いわけではないけれど、スタイルも抜群でなによりいつもにこやかだ。
入社後資材の担当になった私にも、優しくしてくださる…が、お互いにその気はない。
なのに、ちょっと社内で睨まれる事があるのが、私としては解せないのだ。
「藤森さん、悪いんだけどさ、どうしても今日中に必要な品物があってさ。手配出来ないかなぁ」
「今日中ですか? 随分と急なんですね。ただこちらに在庫があれば、お渡しする事は可能だとは思いますが…」
「現場のミスで、発注し忘れてたらしいんだ。一番最初に発注の必要があるものだったんだけどね」
それはドアハンドルではあったけれど、長さなどを調整したりしなければならないとの事だった。
幸い本体は東京支店に在庫があるもの。
ただ加工するスタッフが、すぐに出来るのかが問題だった。
「安井様、お待たせいたしました。加工前のものは在庫を確認できたのですが、今日中にお届けできるのか工場の方とも相談させていただけませんでしょうか? あと、御社への営業担当は…営業1課の小栗でよろしかったでしょうか?」
「うん、そうそう、小栗君。さっきうちに来てたから、彼にも伝えてあるから。多分すぐに社に戻るって言ってたし、行ってくれると思うんだけど。無理を言って悪いんだけど…」
「左様ですか。では小栗とも相談の上、後ほどご連絡させていただきます。申し訳ございませんが、今しばらくお時間をいただけますでしょうか」
「うん、分かった。申し訳ないけど、よろしくお願いします」
「かしこまりました。ではまた後ほどご連絡させていただきます。失礼いたします」
…今日中…マキさん、滅茶苦茶不機嫌になりそう…。