Once again…
彼がもてるであろう事は、私も理解していた。
だからいずれ、こうやって声がかかるのは、自分でも理解していた。
「そうよ。一緒にお昼に出掛けたり、昨夜は子供も交えて食事したらしいわね」
「図々しいと思わないの?子持ちの分際で」
「…図々しいとは思いません。昼食は打ち合わせを兼ねていましたし、昨夜は大木部長もご一緒でした。それに偶然テーブルが隣り合わせただけですし。別に倫理的に問題を起こした訳ではありませんので、恥ずかしいとも思いません」
「だから、なんであなたなんかが、小栗さんと組んだり一緒にいるんだっていうのよ!」
「そんなの、小栗さんと話をしてください。私には関係ありませんし」
「聞けるわけないじゃないの!」
「じゃあこんな不毛な事をせずに、小栗さんが見てくれるように努力すればよろしいのでは?」
「なんですって?」
「昔、付き合っていた事は事実ですけど、その時から小栗さんは集団で一人を責めたりする事を嫌ってました。今の皆さんの事は、小栗さん…どう思うんでしょうね」
「随分偉そうに言うわね…」
「そう聞こえましたか? だとしたら、どう言えばいいんでしょうか?」
「…小栗君には近付かないと誓いなさい」
唖然とした。
今は付き合っている訳でもないのに、仕事で関わっているだけでこれ?
「…何度も言いますが、仕事以上のこ―」
「俺達の関係を、お前達に四の五の言われる筋合いはない。」
私の言葉を遮って、彼女達を切り捨てたのは、いつの間にか彼女達の背後にやってきていた小栗さんだった。
酷く不機嫌な顔つきで、彼女達を睨み付ける小栗さん。
「小栗君…私達は…」
「言い訳は必要ない。俺は、集団で一人をっていうのはめちゃくちゃ嫌いだし、お前らを軽蔑するよ…。二度と俺に近付くな」
「そんな! ねぇ、私達の話も聞いて!」
「聞きたくないし、聞く必要もない。もう声もかけないでくれ」
「小栗さん、そこまでは言い過ぎよ…」
「いや、綾子にちょっかいをかけた段階で、俺はこいつらに関わりを持ちたくないと思った。だからこれでいい…」
「酷い…」
「ああ、これだけは言っておく。俺と綾子の仕事の妨害を、もしもしたやつがこの中にいたら、首を覚悟しとけよ。その為に俺と大木部長が動いているからな」
青ざめた様子の彼女達だったけれど、それがショックのせいなのか、改竄の事でなのかは私には分からなかった。