Once again…
鬱々として
「ところで、小出君。彼女が我が社に残るとして、どうしたらもう二度とこのような真似をしないと思うかね?」
「社長…それは…」
「はっきり言ってもらえるかな。どうなんだ?」
「は…そこにいる小栗君と藤森さんの接触を絶ち、小栗君が松田君の気持ちに応えてやってもらえれば恐らく…」
「…なぜ私が、私の意思ではない交際をせねばならないのか、理解できませんね」
「その通り。藤森君と小栗君が接触を絶つという事は、業務にも差障りが出てくる。そんな馬鹿な話が改善案だとでも?」
「こんなところで話す内容ではありませんが、私は離婚調停をしているという藤森さんに、復縁を申し込んでいる立場です。だからこそ、その案は受け入れられない」
「ふむ…確かに馬鹿げている。もう少しまともな案を、役員会までに出したまえ。それまで松田という女子社員は、自宅謹慎をさせなさい」
呆然としていて、話し合いがとりあえず終結した事に気づくのが遅れた。
「藤森さん、戻りましょう」
大木部長の優しい声で我に返る。
「は、はい…」
「ごめんな…俺のせいで巻き込んだ…」
「小栗さんのせいなんかじゃないわ」
小会議室を出ると、三人で廊下を歩き出す。
「部長、結局どうなるんでしょうか…」
「今決まった通りに、彼女は自宅謹慎、役員会議で進退が決定される事になります」
「もしその間に、またメールなんかで嫌がらせがあれば、そのときは有無を言わさずという決定になるんじゃないか?」
「…」
「とりあえず君たちは、今まで通りの業務に徹してくれるかな。いいね?」
「…はい…」
資材部に戻ると、残業をしている男性社員の他に、斎須さんまでが残っていた。
「藤森、待ってたよ! どうだった?」
「斎須さん…。とりあえず私はとりあえず、今まで通りです。彼女は…まずは自宅謹慎で、役員会で決定するそうです」
「そう。面倒な話に巻き込まれたものだね。まあ、いい。今夜は気分転換しましょう! 息子さんも連れて、食事行くから準備しなさい!」
「え? あ、はい!」
慌てて退社の準備を始める。
今夜は確かに鬱々とした気分になって、食事も落ちついて取れないに違いない。
それにきっと、家にいてもあまり気分が良くないと思う。
それなら、事情も分かってくれている斎須さんと気分転換するのも、今の私には必要かもしれない。
今夜は小栗さんと会わないといいけど…。
だってあの夜、部長もいたけれど、小栗さんと遭遇したことで嫌がらせが悪化したようなものだ。
彼のせいではないけれど、でも…。