Once again…
時間ぎりぎりにではあったけれど、帰宅しようとしていた翔太をうまく学童の側で捕まえた。
「翔太ぁ、ちょうど良かった! ご飯食べに行くわよ!」
「あ、おかさん! ほんとに? やったぁ!」
嬉しげに、学童の先生にさよならを言うと、こちらに走ってきた。
「翔太、こちらは会社の先輩の斎須さんよ。ご挨拶してね?」
「こんばんは、斎須です」
「藤森翔太です! こんばんは!」
「お、礼儀正しくて、しっかりしてるなぁ」
「ありがとうございます、挨拶だけはきちんとって思ってるんです」
「今時は出来ない子供が多いからなぁ」
褒められて悪い気はしない。
翔太もすごく嬉しそうだ。
斎須さんと翔太と連れ立って、駅の方に向かう。
というのは、この辺りは駅周辺にしか飲食店がないからなのだけれど。
「翔太君、君は何が食べたい?」
斎須さんにそう問われ、翔太が首をかしげた。
「んー…給食が今日は烏賊の松毬焼きってやつだったんだ。僕、烏賊ってあんまり好きじゃなかったから…」
「じゃあ、お肉のほうがいいかな?」
「うん! 僕、お肉大好き!」
「ははは! 私も大好きだ。じゃあ、焼肉でも行こう!」
「うわー、焼肉? すっげー!」
ウキウキと手に手をとって、焼肉屋を目指して小走りになる二人を追いかける。
その二人の様子に、思わず苦笑した。
向かった店は、1時間半ほどのバイキング形式で、以前一度だけ来たことがあった。
いい肉を使いつつも、寿司やデザート、サラダに麺類までが豊富で、好きなものを好きなだけ食べられる。
「翔太、デザートは後よ!」
嬉々としてアイスコーナーに走ろうとしていたところを捕まえる。
「はぁい…」
サラダやサンチュを大量に取って、その後に肉類を運ぶ。
ドリンクはソフトドリンクだけチケットがあったけれど、私と斎須さんは酒類も頼んでいた。
「藤森は何を飲む?」
「マッコリの…キウイジュース割にしようかしら…」
「じゃあ、私は…何にしよう…。それ、美味しい?」
「はい、飲みやすいですよ。摩り下ろしのキウイなんで、ビタミンCも豊富ですし」
「じゃあ、同じ物にしてみよう」
そう言うと、すぐにオーダーをする。
翔太は慣れたもので、自分でドリンクを取りに行く。
今夜は珍しく、レモン風味の野菜ジュースにしたようだった。