Once again…
役員会直前に
思ったよりも翔太は斎須さんに懐いたらしく、おかげで楽しい食事になった。
「藤森、表情がさっきよりもましになったな。その方がいい」
「斎須さん…ありがとうございます。誘っていただいたお陰です」
「藤森も災難だったけど、でも部長と小栗がついてる。私達もな」
「はい…ありがとうございます」
「入社して間もないのに頑張ってきたんだし、ここで負けたらもったいないぞ?」
「はい」
「私達もな、伊達に長いこと働いてきてない。いくらでもフォローしてやるから安心してな」
「心強いです。ありがとうございます」
会計を済ませて、店の外に出る。
「藤森ってさ、小栗と付き合ってたってほんとか?」
「…結婚前の話ですけど、本当です」
「今は離婚調停中だったな」
「ええ。でも彼の事は関係ないんです。主人…他の女の人に子供が出来て。そっちと一緒になりたいみたいです」
「小栗の事、考えてやれないのか?」
「…もし考えるのなら…こっちの決着がついてからかなって思います。じゃなきゃ、主人と同じになってしまうと思うので」
「でも、翔太君のこともあるだろ?支えてくれる人がいてもいいんじゃないか?」
「いえ、でも…調停で有利にしたいので」
「そっか…強いな…。私もバツイチだけどな、子供もいなかったし…向こうの良いように話が進んでな。何も出来なかった」
「そうなんですか…」
「藤森は翔太君もいる。頑張れ…」
「はい」
斎須さんのような凛々しい女性でも、そんな思いを抱えていたんだなと思うと、少し切なかった。
それでも斎須さんも今は、仙台の取引先の営業さんともう二年ほど遠距離恋愛中らしい。
お会いしたことがあるけれど、なかなかのイケメンだった記憶がある。
幸せになってほしいと思う。
同じように、私だって幸せになりたいけれど。
翔太ごと、私を受け入れてくれる人がいれば…。