Once again…
マキさんとは、加工担当のスタッフの一人で、50代後半の気難しいおじさんだ。
マキさんに連絡を入れつつ、営業1課の小栗さんにも社内メールで連絡を入れておく。
案の定、マキさんはちょっと不機嫌になってしまった…面倒すぎる。
「安井様…恨みますよぉ…」
30分ほどして、私のデスクで内線が鳴ったので受話器を取る。
「はい、資材藤森です」
「営業1課の小栗です。安井さんの件なんだけど、今いいかな」
「あ、はい。お待ちしてました。安井様の指示に基づきまして、工場のほうで準備をしていただけるようにはしておりますが」
「うん、マキさんにも確認した。ありがとう。それで、至急納品用に伝票とか新規カタログも4・5冊用意して欲しいんだけど」
「かしこまりました。では今から立ち上げますので、15分ほどでお持ちしますが」
「うん、それでいいよ。じゃあ、工場のほうに持ってきてくれるかな」
「かしこまりました」
「うん、よろしくね。俺これから工場に移動するから、何かあったらこっちに回して」
「はい、では後ほど伺います」
電話を切ると、小さく溜息を一つ。
すぐにカタログを用意し、専用の袋に詰める。
そしてPCに向かって、特注分の伝票を打ち込む。
正規金額に加工代などもつくので、少々割高。
それを部長に確認印を貰い、経理課へ持ち込む。
請求書部分を切り離し、経理主任に手渡した。
そしてすぐさま工場の小栗さんの元に走った。
入社して仕事には慣れたとはいえ、まだ3ヵ月の新人。
新人と言うにはちょっと年を取っているけど、新人には違いない。
だから今は自分の業務をこなす事で精一杯で、他部署の先輩たち全員の顔も名前も覚えたわけじゃない。
「小栗さんってどんな人なのかなぁ。あんまりかっこいい人だと、他の女子にいびられちゃうかも知れないしなぁ…」
暢気に私はそんな事を考えていた。
まさかこの後で驚愕の出会いが待ってるなんて思っていなかった。
しかも…建築資材がいっぱいの、倉庫の一部の【工場】で。