Once again…
病室には翔太は入れなかった。
病室に入ったのは、私と弁護士だけ。
翔太と小栗さんは廊下で待っていてくれた。
「では今回の件も含めまして、早期解決に持っていくよう進めますがよろしいですか?」
「はい、どうぞよろしくお願いいたします」
彼女は傷害罪で引き続き取り調べられ、執行猶予がついたとしても罪にはなる。
和解なんてするつもりはさらさらなかった。
夫の隆弘が、調停に応じたのはそれから半月後。
慰謝料として200万円、月々3万円の養育費支払いに応じた。
小栗さんは「もっとふんだくればよかったのに」と言ったけれど、とりあえずマンションの支払いに使った頭金程度が戻ればいいと思っていた。
誉田里美は執行猶予がつき、実家に引き取られていった。
彼女の両親から、少ないけれど…と慰謝料として100万円と手紙が弁護士を通じて渡された。
手紙には娘のしでかしたことへの謝罪が記されており、隆弘への訴えを起こす所存だと締めくくられていた。
そして私は、藤森から元の蓮見という戸籍に戻った。
仕事上では面倒だということもあり、そのまま藤森の名を使うことにしたけれど。
それに関して、小栗さんだけは不満たらたらで、ちょっと面倒くさいと思ったのは秘密だ。
離婚届の提出の後マンションは隆弘だけの名義に変更し、銀行や学校・学童などにも書類を出さなくてはいけなくて、ちょっとうんざりする。
でもすっきりと心機一転、頑張って翔太を育てていこうと決心した。