Once again…


「お前が俺とのコンビを解消したり、会社を辞めたって意味はないからな」
「え?」
 不意に背後から声をかけられて、慌てて振り返る。
私に向けられたその声で、私が戻っていた事に気付いて気まずそうな顔をする人もいた。
その、そこにいた誰もが声の方を振り返ると、小栗さんが立っている。
…ちょっとダークなオーラを感じるのは気のせいだろうか。
「今回のこれも含めて、アクセスされた元を辿る事が出来たよ。もうこれで、言い逃れは出来ない。だからもう、この一件も終わるから安心しろよ」
「…安心なんて出来るわけがないじゃないですか。そうでしょう? 今回も前回も、外部からのアクセスなんですよ?」
「セキュリティーも、外注になるけどもっと強化することになったよ。ツイデに、俺達営業にとっては面倒だけど、サーバーにアクセスするにはIDを必須とするってさ。だから外部からのこういったアクセスは出来なくなる」
「でも…!」
「でも、もし翔太に危害を加えようとしたり、お前に何かしようとしたりしたら、必ず俺が守ってみせる。それに、その時にはもう警察沙汰になる。そこまで根性あるわけがないだろうけどな」
「だけど…」
「だけどじゃねぇよ。俺がお前達を守ってみせるって言ってるだろ? 何の心配がある?」
「えーと、小栗? それって藤森に対してのプロポーズに聞こえるけど?」
「そのつもりですよ、寺尾さん」
  …みんな呆然としてますけども。
そりゃそうでしょう、私…離婚成立したばかりですから。
因みに、コンビは組んでいたけれど、現状付き合っていたわけではないし、唯のモトカレ・モトカノの関係なだけですから。
「そ…それって早過ぎないか、小栗?」
「十年待ってたんで。これ以上はもう待てませんから」
 …平然と言い放つ小栗さんに対して、私は何も言い返せなかった。
その前に、何て言えばいいのか、まったく思い浮かばなかった。


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