Once again…
その日は新製品の営業で、一緒に来ていたのだけど。
資料作りはやったけど、プレゼンなんてまったく出来ないわけで。
だから一緒に得意先回りをしたって、ただのお邪魔虫でしかなくて。
何のためについてくる必要があるのか、正直理解に苦しむ。
なのにいつも、セットで外出になっていた。
「私としては、またあらぬ疑いを持たれる事のないように、出来る限り大人しくしていたかったんですけど」
「まあ、藤森さんがそう言ってもねぇ。小栗君の事だから、今後も引っ張り出されるよ」
「はぁ…」
ちょっとブルーな気分だ…溜息まで出てきた。
「なんで溜息つくんだよ」
帰社途中の車の中…。
幸い、プレゼンはいい感じにまとまって、今後使って頂ける可能性が高い。
それは良かったのだけど、問題は小栗さんで。
私は移動時に、彼と2人きりになるのが悩みの元だった。
それで痛い目にもあったし、離婚してこれから頑張っていこうという時に、恋愛なんて考えたくない事だったから。
でも小栗さんは、それを知った上であれからもアプローチをかけてくる。
食事へのお誘いだったり、休日に翔太とサッカーをしに公園に行ったり。
「なあ、いい加減、素直になってみるってのはどうだ?」
「何に対してです?」
「俺達の事に決まってるだろ?」
「まだ離婚したてなので、余計に考えたくありません。翔太も混乱しますから」
「翔太はいいって言ってくれてるぞ?」
「いつそんな事聞いたんです!」
「ん? サッカーしに行った時」
「勝手な事しないでください!」
「じゃあ、少しでいいから考えろよ! 今すぐつきあえなんて言わない! でも考える位出来るだろ?」
「…無理よ、そんなの…」
「じゃあ、何が無理なのか、教えてくれよ。そうでなきゃ、俺だって引けない!」
その後はただ黙り込んだ車内。
それは社に到着するまで続いていた。