Once again…
 部長に報告をして自分のブースに戻ると、すぐに安井様に連絡を入れる。
「TAJIMAの藤森と申しますが、先ほどは失礼いたしました。ご連絡いただきました本日中にとのお品ですが、なんとか2時ごろには小栗がこちらから持って出られそうとのことです」
「そうですか! あー、助かった! ありがとうございます。届き次第現場には、僕の方で搬入しますので。いやー、本当に助かりました。ありがとう、藤森さん!」
「いえ、お役に立ててよかったです。では3時ごろにはそちらへお届け出来ると思いますので。よろしくお願いいたします。失礼いたします」

 ほっと一息ついたところに「結構余所行きの話し方するんだな、今は」って声が掛かった。
びっくりして振り返ると、そこには小栗さんの姿。
「あ…。いえ、仕事ですし当然かと思いますが…」
「ふーん、そう。でも俺にまでそんな話し方じゃなくてもいいんじゃない?」
「…勤務中ですし、ここでは先輩ですから…」
「関係ないと思うけど。ま、いいや。大木部長にも言ったんだけどさ、今回の搬入、藤森さんも来て手伝ってくれる?」
「は? 私がですか?」
「うん、そう。君が。カタログも運んでもらいたいし、君にも確認してもらいたいから」
「え、でも…」
 いいのか? という顔で部長のブースに目を向ける。
そうすると、頷きながら追い払うようなしぐさをしてみせる。
「…かしこまりました…同行させていただきます」
「じゃあ、2時10分前までに着替えて工場に来て。そのまま車に積むから」
「はい…」
 出勤には幸いスーツで着ていたし、同行するには差し支えないだろう。
「ああ、そのまま直帰だからね。そのつもりでいて」
「は?」
「現場にも同行してもらうよ。じゃ、また後で」
 去っていく小栗さんを呆然と見送ると、はっと思い直して部長のブースへ向かう。
「あの…部長。なぜ私が小栗さんの同行を…?」
「ああ、小栗君と先方の希望のようですよ。お子さんの事もありますし、遅くならないようにとは言ってありますが…お願いできますか? 帰りはそのまま直帰していただいて、明日の朝報告をお願いします」
「…かしこまりました…」

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