Once again…
コンビニでぱっと食べられそうなものを2人分買い込み、小会議室に戻ったのは休憩時間に入るほんの少し前。
何とか頭に叩き込み、必要部数の資料を準備し終わったのは、もう相手先に向かわなければならないだろう時間までぎりぎりのところだった。
この難題を私達に振った張本人の部長は、午前中に別件で外出し戻ってきたばかりだった。
「2人共、準備は出来ているか?」
「ええまあ、一応頭に叩き込みましたよ」
「自信はないですが…とりあえず」
「藤森は小栗のサポートをしてやってくれればいい。私も出来る限りサポートする」
「先方はこんなに急な代打で大丈夫ですか?」
「急な異動でと、私から連絡を入れてある。それに藤森がサポートで残っているし、それを知ってくれているから問題ないと言って下さった」
「私…ですか?」
「そうだ。いつも丁寧な資料を作ってくれている人がサポートについているなら、心配要らないだろうと」
「そうですか…それなら藤森の分も頑張らないといけませんね」
そう言うと、私の肩を軽く叩く。
そして昔と変わらない笑顔で私を見た。
「ほう…小栗もそんな風に笑えるのか」
「は? 俺だって笑う位しますよ」
「いや、お前がそんな風に笑うのは初めて見たな」
「そういえば職場では笑っても…目が笑ってないわ、小栗さん」
「…ていうか、こんな話してる暇あるんですか? 部長…」
「ああ、いかん! 急いでくれ!」
資料と荷物を持って、駐車場へ急ぐ。
そして部長の乗る車について、一緒に乗り込んだ私達も車を出す。
「お前、殆ど寝てないからしんどいだろうけど、あと少しだけ頑張れ」
「大丈夫よ」
「顔色があんまり良くないんだよ。今日は俺が飯作るから、帰ったらゆっくり寝てろよ?」
「…また来るの?」
「毎日でも行きたいんだけどな。とりあえず今はプレゼンに集中しよう」
「はい…」
データの入ったタブレットを抱え直し、頭の中でプレゼン中の補佐としてやらねばならないことを、色々とシュミレートし始めた。