Once again…


 2時少し前、着替えを済ませると工場の入り口で搬入を開始している小栗さんの元へ急ぐ。
「お待たせしました…」
今日は黒の細身のパンツスーツ、お気に入りのショルダーバッグ。
黒のバックストラップのヒールは、オープントゥタイプのもの。
極普通の通勤スタイルだと思う。
取引先に同行しても…うん、多分問題はないだろう。
「やあ、待ってたよ。こっち、後部座席に積んでおいてくれ」
 そう言って、笑って見せた。
相変わらず細身で、めちゃくちゃ背は高いわけじゃないけれど、足が長くてバランスがいいから背が高く見える。
あの頃はサッカー少年だったから短めだったくせのある髪も、ちょっと長くなって後ろに流すように整えている。
そして相変わらずなのは、人懐こそうな笑顔と、焼けた肌。
でも10年経って、やっぱり大人の男って感じだ。
体に合わせて細身の濃紺のスーツに淡いブルーのシャツ、少しクラシカルなダークボルドーの細身のネクタイ。それが良く似合っていた。
渡されたカタログと書類の入った手提げ袋を後部座席に乗せる。
でもそうすると私が座る場所がなくなる。
なぜなら、後部座席には、色々なサンプルやカタログが積み込まれているし、後から積み込んだ荷物が飛び出してきているからだ。
「…すごい荷物…」
「まあこれでも営業だからな、常にサンプルもカタログも持ってるし。荷物は大量だなぁ」
「いえ、当たり前の事だと思うし」
「よし、じゃあ行こうか。あ、乗るのは助手席だから」


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