あのこになりたい

切られた髪と思春期

11歳。


それは思春期への入口だっただろうか…



「あ〜またママに怒られる」


「え〜。80点で怒られるの？私なんか58点だし」



テスト用紙をヒラヒラさせながら無邪気に笑う綾が少し憎らしいと思った。



「怒られない？」


私が聞くと、


「テストで怒られたことないよ。お姉ちゃんと喧嘩した時とか嘘ついたりしたら怒られるけど…」


また無邪気に笑う。



「叩かれたりする？」


私は、少し小さな声で聞いた。



「叩かれたことはないなぁ…。咲ちゃんはある？」


私は、少し考えてから


「あんまりない…」


と答えた。



「そっか」


綾はランドセルを揺らしながら歩いた。


私はそんな綾の後ろ姿をぼんやり見ながらとぼとぼ歩いた。



小学5年生の私は、綾が羨ましかった。



不公平だ…


私だって優しいお母さんがよかった…


いいな…綾は。


私はいつもより重いランドセルを猫背気味に背負って歩いた。


ママが嫌う猫背…