あのこになりたい
兄の部屋に寄って


「ご飯は…?」


「部屋で食べる」


このやり取りを行うのは私のひとつの習慣になっていた。



「部屋で食べるって」


キッチンにいる母に言う前にすでにトレーの上に夕食が置かれていた。



「冷めないうちに持って上がって」


母が言う。



私は無駄に往復をする。



「ご主人様〜」


とか言って持って行きたいところだが、そんなことしたらもう二度とこのドアは開かないだろう。


兄は、


「悪いな…」


と言って受け取る。



食事は父の帰りが早い時は3人だが遅い日は母と二人でとる。



会話は特になく、たまに母が成績や授業のこと先生について聞いてくるぐらいだ。



つまらないと言うより、ただ苦痛な時間に過ぎない。


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