あのこになりたい
「失敗するかもしれない。理想にはほど遠いかもしれない。だけど、私らしく生きさせて欲しいの。嫌いになりたくないんだよ…お母さんのことも自分のことも!!」



私は子どもみたいに大きな声で泣いた。



兄は私を抱きしめてくれた。


「俺は…咲を誇りに思ってる。傷つきたくないってだけでここまでできないよ。咲、ごめんな。俺の分まで頑張らせて」


兄の言葉にまた涙が止まらない。


頭の中には過去の色々な事が浮かんでは消えていき、私は目の奥が痛むほど泣いた。


母は私達を泣きながら見つめていた。


声も枯れ果てて鼻をすする音が静かに響く中、母は何かを決意するように顔を上に向けて大きく深呼吸した。


何が始まるのかと私と兄に緊張が走る。


まさか…またハサミなんてこと…


母の行動に目を見張っていると、母は一瞬フッと笑ったように見えた。


「そうね…咲。お母さん、あなたを信じることにするわ…。あなたらしく生きていく姿を見守ってみるわ」


母は穏やかに言った。



「お母さん…」


私は、母に抱きついた。



何年ぶりだろう…


母はもっと大きかった気がしてたけど、こんなに華奢だったんだなぁ…


「こんなに大きくなって…」


母は私の背中をさすった。


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