君とは違う私の世界。
†1.プロローグ†
__手に取ったのは古びた本__
ある寒い日の朝。
辺りには霧が立ち込めていて 空を覆う厚い雲が まるで世を支配したかのように 不気味な色をしていた。
少女はいつもより少し早い目覚めだった。
髪をすいて パジャマから着替える。
肌を刺す冷たさが 少女を身震いさせた。
その日の少女は どこか様子が変だった。
クローゼットから無理矢理コートを出し ついでにマフラーも手に取った。
ベッドの布団を直さず 少女は部屋を後にした。
階段を降り キッチンに顔を出すと 柔らかなオレンジの髪を揺らしながら 少女の母が優しく振り返った。
「あら、今日は早いのね。」
少女の返事を待たずに母が続ける。
「今日の天気は最悪よ?お昼前わ吹雪らしいわ。今日は外出を控えた方が良さそうね。」
少女が席につくと 当たり前のように温かなココアが出てくる。
「昨晩はひどく冷えたでしょう?」
「…えぇ とっても。」
どこか弱々しい声に 少女の母は顔を曇らせた。