君とは違う私の世界。




やがて現れた 立派な白と金色の扉。


彼が白い手で 目の前の大きな扉に手をかけた。


「…さぁ 中へ。」


_____ギィー………。


開かれた扉の奥は真っ白すぎて光が反射しあい それが目に刺さるようにうつる。


_____コツ コツ コツ。


足音だって大きく響くその部屋は しばらく目に馴染まなかった。


目を細めながら 真っ白で見えない 明るい先をゆっくりと進んでいく。


「…止まれ。」


低い彼の声にビクリと反応して進めていた足を止めた。


「前なんて見えないのに 君は一体どこに向かうつもりなんだ?」


スタスタと近づく彼の気配。


「あら 少しなら見えるもの。」


私の声になんて耳を傾けずに さっきの言葉を忘れてしまうくらい優しくひどく冷たいその手で私の手をとり 先を歩き出した。


「ここには 足元を邪魔するようなものは何も転がってはいない。」


その不器用な言葉に 思わず言い返す。


「素直に 真っ直ぐ歩いていいよ とは言えないの?」


「………。」


完全無視だったのだけれど。


次第に目は その眩しさに慣れてゆき 彼に座れと言われてソファーに押し飛ばされたときには 辺りをはっきり捉えることが出来た。


そして見えてきたのは 大きなツインのベッドに横たわる 白髪のおじいさんだった。




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