君とは違う私の世界。




「…ねぇ あのおじいさんは……?」


何か湯気の出ているマグカップを私に差し出した彼に聞く。


「飲め。」


「あのおじいさんは?」


「いいから飲め。」


まるで話を聞かない人のサンプルだわ。


_____コクン。


ここに来てから よく考えてみればなんだけど 何だかんだ彼がいなきゃ大変だったわね。


それになんだか 会ってまだ間もないのに 彼とはずいぶん前から知っているような。


素直に従うのも 無言の恩返しにくらいはなるのかしらね。


_____コク コク。


ほんのりと甘いそれは 生きていることを感じさせるほど深く 体の隅々までに行き渡る。


「…飲んだら来い。」


「飲み干すの?」


「当たり前だ。」


テンポの良い返しは シェリアをさらにむっとさせる。


だけど 今は我慢して従うの。


冷静になってみれば 彼以外に頼れるものなんてないもの。


「……っあぁ。」


一気に飲むと ドクドクと心臓が激しくなるのがよくわかる。




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