君とは違う私の世界。




「……誰…か…助けて……。」


必死に絞り出した声を出したときには すでに手を伸ばせば届くところに気配はあった。


そしてその気配が シェリアに触れようとしたときだった。


「その者に触れるでない!!ここからすぐに離れるのだ!!」


すでにシェリアの服を掴んでいた その"気配"は すぐにそこから退いた。


「おい怪我はないか?早くこちらへ。」


だんだんと暗闇に慣れ始めた目は 少しだけ 相手をとらえることができた。


私と同じくらいの年だろうか。


手を引いて 私をエスコートする彼の手は 驚くほどに冷たく 固かった。


しばらくして 目の前に現れたのは 見上げるほどに高い大きな扉。


「……ぇ…?」


そしてその大きな扉を持つのは おとぎ話に出てくるような 綺麗なお城。


「ココは一体…?」


「話はあとだ。私には君に聞きたいことが山ほどあるんだ。」


彼がゆっくりと扉を開くと あまりの明るさに 目を開けていられなかった。


「中へ入れ。」


かなり強引に城の中に入ると 少しずつ光に慣れた目が 様々なものを捉えはじめた。


城のロビーには 大きなシャンデリアがぶら下がり 真っ白な大理石が敷き詰められていた。


天井は吹き抜けで 目の前には長い階段が佇んでいる。


「なにボーッとしている。混乱しているのは分かるが手を打つなら早い方がいいのだよ。」


そして 私の前を行く彼。


ベージュに近い色の髪がふわふわ柔らかそうで 冷たいグリーンの瞳が 寂しく見えた。


「…ごめんなさい。」


抗うことはせずに 素直に聞き入れた。


目の前の長い長い階段を軽くスタスタと上って行く彼を 羨ましく見上げながら 私も必死に付いていく。


後ろをチラリとも見ずに行くので 私と彼との間の距離は開くばかり。




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