クローバーの証
電話の相手は高校時代の仲間であり、その頃好きだった神崎明人。声、しゃべり方、テンション全て昔のままだった。私は明人が羨ましかった。電話では強がってはみたが内心それどころではなかった。
「クローバーか…」
徐に立ち上がった。そして寝室のクローゼットに向かった。大体今住んでいるマンションも慰謝料と一緒に貰ったもの。結局今も彼の影を追い掛けているようなものだった。
「たしか…」
クローゼットを開けると沢山の服が掛けられていた。ほとんど着ていない。ここにあるのはある意味強がりだった。私はこんな服を着れる良い女だと思わせたいがために。
「あっ…」
どんなに引っ越しをしても必ず持って来た服があった。たくさんの思い出が詰まった高校時代の制服だった。
「良かった…」
しばらくゴタゴタしていたためにきちんと制服を見るのは久しぶりだった。制服のポケットを探ると小さなノートの様な物が出て来た。
「あった…」
それは高校の生徒手帳だ。一番後ろに在学証明が入っている。
「懐かしい…」
在学証明に貼ってある写真はまだ輝いていた頃の私だ。今の私とは比べ物にはならない。それと一緒にペンダントが挟まっていた。クローバー。それが証だ。
「また…会いたいな…」
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表紙・目次

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