クローバーの証

僕は何をしているのだろう。母親になり女としての最高の時を経験した。だが僕は…
「ねぇ兄ちゃん。良い子いるよ~」
「うち来てよ~」
道を歩くと必ず女性やキャバレーの呼び込みに話しかけられる。理由は簡単だ。僕が男っぽいからだ。
「クールなのね♪そこが良いわ~♪」
なんだか不思議な気持ちだ。僕なんて言っているから見た目は自然だが僕は女だ。気持ちの底から女と言う気持ちには変わりは無い。しかし自分が分からなくなっていた。何気無く携帯を取り出した。子供に電話でもしようかと思った。今は家で旦那といるはずだ。
「…もしもし?あなた?うん、わたし。こっち?大丈夫。父さんも怪我程度ですんだから。うん…しばらく一緒にいないといけない…うん…母さん一人じゃ大変だし…佐奈羽は?そう。電話変わってもらえる?」
電話の先でゴタゴタしている音が聞こえた。そして明るい声が聞こえて来た。
『ママー!サナちゃんですー!』
「サナちゃん。良い子にしてる?」
『うん!パパのはなしきいてるよ~!』
「そう」
『ママいつかえってくるの~?』
「そうねぇ。おじいちゃんが元気になったらかな」
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