烏鎮(うーちん) 上海水郷物語2
にもかかわらず静江の心は晴れない。65年前に
タイムスリップしてこの風景がそのまま殺戮の場
となったのかと思うと心が痛む。

駆け抜ける日本兵。中国民兵との攻防戦。中国兵は民間
人に紛れ込んでどれが兵隊やら分からない。気を許した
らすぐさま民家から銃撃、手投げ弾が飛んでくる。

祖父は発狂しそうな戦場の中で、ほんの一瞬、ここから
の景観にハット息を呑み感動したのではなかろうか。

『祖父はここで沈む夕陽を見たんだ』
静江にはそうとしか思えなかった。
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